2011/07/17

Ruby Kaigi2011に参加して(二日目)

今日のRuby Kaigiでは、ライブラリ、テストについてのセッションを中心に聞きました。
Rubyには、RubyGemsという、アプリケーションやライブラリを管理するツールがあり、世界中の開発者が作成したライブラリを簡単に手元のシステムに組み込むことが可能です。

Eric Hodel氏は、ライブラリを作成するにあたっての注意点や、コツをたくさん紹介しました。ライブラリ開発時に実装したほうがいい機能などから、公開後、重要となるユーザーとの情報共有の手法など多岐にわたりました。

Richard Huang氏は、手元のRailsアプリケーションが、ベストプラクティス(最適な手法)で記述されているかどうか、調査するライブラリ「rails_best_practices」を紹介しました。外形上の問題だけでなく、構文解析を行うことによって、プログラムの流れにまで踏み込んで調査することが可能です。

Rubyでは、各要素の影響範囲がはっきりしているため、複雑な拡張ライブラリも、読みやすく記述できることが大きな利点だと言えます。「rails_best_practices」でも構文解析では別の作者のRubyライブラリ「ruby_parser」を利用して実現しています。

午後聞いた、テストの話やRubyのJIS規格化の話はまた別の機会にご紹介できればと思います。

2011/07/16

Ruby Kaigi2011に参加して(第一日目) その2

今日、参加したRuby KaigiのAaron Pattersonのキーノート、午前中のRubyの未来についてのセッションは考えさせられる内容でした。全体通して、剛柔併せ持った発表内容に、まったくもって魅了されました。目頭熱くなり、頭の中熱くなり、色々刺激的でした。

その中で、一番私が関心を持ったのは、Rubyの開発管理についてのアイデアでした。Aaronの話の中でも、「responsibility to communicate(対話の責任、説明の責任)」という提案は重要だと思いました。

世界で5本の指に入るくらい注目される言語に成長したRubyにとって、これまで以上に説明する必要は高まるでしょう。
Rubyのコア開発チームとして、世界の開発者に対して質問に答えられるスポークスマンを配置する必要があるかもしれません。チケットベース、メーリングリストがあるから、と言うよりは、podcastとか少し距離感がある人にも届くメディアを使う時期だと思います。

その後の、コアコミッタによる未来のRubyについての話も面白かったです。8月末にリリース予定というRuby1.9.3を土台にして、その未来はどうなるのでしょうか。

Ruby1.9.4なのか、Ruby2.0なのか。そしてそのバージョンは、どんな思想でRubyの世界が構築されるのでしょうか。
誰も答えを持たない(Matzにも)そんなわくわくした謎掛けは、夏の夜長に思いを巡らすのに最適なのではないでしょうか。

一日で頭の中が熱くなっています。
さあ、あと二日どんなサプライズがあるのか。とっても楽しみです。

Ruby Kaigi2011に参加して(第一日目)その1

今日は、Ruby Kaigi 2011に参加しました。3日間連続開催という日本でのコンピュータ言語に関するカンファレンスでは、かなり大規模なイベントです。

初日の今日は、Rubyの開発者の一人Aaron Pattersonの基調講演からスタートし、開発チームによるRubyの未来についてのセッションの後、2つのホールを利用しての参加者によるセッションが続きました。

午後のセッションでは、クックパッドの舘野さん、GitHub(ギットハブ)のCorey Donohoeさんのセッションに参加しました。私の関心分野でもあるウェブ開発の話だったので、とても面白く話を聞きました。

舘野さん、Coreyさんの話で共通して感じたのは、継続的に顧客に価値を提供するために、貪欲に新しい技術を取り込んで行こうとしている姿勢です。クックパッド、ギットハブとも様々なツール(オープンソース、有料サービス問わず)を活用し、世の中になければ自作していくことが徹底しています。

面白いのは、両者の顧客層で、クックパッドは、30代女性の半分は利用しているというサービスであり、一方、ギットハブは、30代女性の大半はその存在すら知らないと言うサービスなのです。(ギットハブの名誉のために言っておきますが、会場内での利用者は9割を超えていました。)

つまり、顧客の要望が大きく異なっていても、開発側のベストプラクティス(最善の手、定石)にはそんなに違いがないのです。

実際、ギットハブの手法(一日に何回もデプロイ(システムの更新)できるし、実際する)と言うのは、通常のウェブサービスではびっくりするような斬新な内容ですし、クックパッドのRailsのExtensionの機能をフルに使って、試験的なサービスを限定的に安全に提供するというのも、私にとっては新鮮な提案でした。

しかし、現在、動くプログラムに追加機能を追加して、やっぱり動くようにするということは、どの会社にも共通する課題ですし、そのためのいろいろな手法の大半は共通しているのです。

CI、テスト、自動化、ハートビート、LVS、モニタリング、memchached・・・。

クックパッド舘野さんの言葉を借りると、「定石をきちんとやっておけば大丈夫」なのです。とても、刺激になった午後の2セッションでした。
Aaron Pattersonのキーノート、午前中のRubyの未来については、次のエントリーで書いてみます。

2011/04/12

学び方という「名前のない品質」を、パターン言語を使って向上する

慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスでは、「学習パターン」という小冊子を作成し、学生が自律的に学び方を向上していけるような仕掛け作りに活用しています。
4月12日開催のQCon Tokyo 2011で、その発案者である井庭崇氏の講演を聞きました。

「学習パターン」は、公募で集まったキャンパス内の学生が中心となったプロジェクトで作成され、作成にあたっては、パターン言語と呼ばれる手法を利用してまとめられました。

パターン言語は、もともとは建築家クリストファー・アレグザンダーが提唱したもので、すぐれた建築に存在する「名前のない品質」を形式化することを目的としたものでした。現在は、コンピュータ開発などの他の分野でも幅広く利用されています。

井庭氏は、この冊子を活用することで、学び方のワークショップがとても盛り上がるようになったと言います。ワークショップの前に、自分が過去に経験のある学び方、これから未来に挑戦したい学び方を、冊子の中から5つづつ選んでもらい、ワークショップで、他の参加者と会話しながら、自分が挑戦したい学び方をすでにやっている人を探してもらうのだそうです。

学び方は経験的な事柄なので、業界の知識や、経験年数による知識の壁を超えて、参加者が自由に対話することが可能で、自分の経験を話すことを通して、その経験について考えを深めることができるのです。

また、冊子を作成したことで、数量的な計測(アンケート)が可能となり、その計測結果の分析を通して、さらに「学び方」についての深い考察が可能となりました。今後、学び方の傾向分析などに活用できるでしょう。

この「学習パターン」におけるパターン言語の活用は、学び方という「名前のない品質」を認識し、参加者間のコミュニケーションを誘発し、最終的には自分自らの学び方の向上に寄与していくという、具体化な適応例を提供しています。

現在、「学習パターン」の冊子は、学内向け、学外向けにまとめられて、学習パターン・プロジェクトのウェブページ(http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/)で公開されています。

2011/04/06

AWS クラウドアドバンテージ セミナー



4月6日午後に開催された「AWS クラウドアドバンテージ セミナー」を聴きに行きました。

データセンター「東京リージョン」が稼動した後、はじめての大規模なセミナーとなりました。
しかし、地震の影響もあり、派手な演出はなく、AWSの実績の紹介が中心となりました。

キーノートセッションの中で、エバンジェリストの玉川氏は、地震の後「自社システムの可用性を高めるのにAWSを利用できないか」といった相談が増えたことから、待機系でのクラウドコンピューティングの導入が進み、クラウドのメリットへの理解が浸透すれば、徐々に主系の置き換えに発展するのではないかという見通しを述べました。

キーノートセッションの後は、日本での先行事例の発表が複数あります。
Ustream amazon2011_knot での配信もされています。

2011/04/04

高橋亮平さんの講演『「世代間格差の克服」に向けた政治参加と行政改革』に参加しました

4月3日に虎ノ門で開催されたプロジェクトKの「架け橋」企画での基調講演で、高橋亮平さんが、『「世代間格差の克服」に向けた政治参加と行政改革』と題した講演をされました。

高橋さんは若いながらもするどい論客で、市川市長選挙の逸話は友人から聞いていたので、前から一度話を聞いてみたいと思っていました。

講演は、前半で世代間格差の現状とその原因について、後半では、EUの中でも特に若者政策に積極的なスウェーデンでの取り組みから、若者政策の方向性を紹介しました。

いくつかキーワードを以下に

  • 「人生前半の社会保障」 … 労働、家族、教育に関する社会保障と呼んでいて、日本では医療、年金制度に比べて予算配分の比重が低い。
  • 「シルバー・デモクラシー」 … 高齢の有権者が増えることによって、政党の政策が高齢者向けに変化していく現象。故内田満氏が『シルバー・デモクラシー』という書籍を1986年に出している。
  • ワカモノ・マニュフェスト2008では、4つの政策の柱を設けた。「労働・雇用」「財政・社会保障」「若者参画」「家族・教育・子育て」
  • 民主主義教育の例:若者の模擬選挙、争点教育(選挙での争点を勉強する)、マニュフェスト比較
  • 若者政策の例:自治体首長へのインターンシップ、官邸フェロー制度、審議会へのクォーター制、選挙権の年齢引き下げ、被選挙権の年齢引き下げ
  • スウェーデンでの例:青年事業庁(省庁横断、政策評価と今後の方針立案、非営利セクターとの連携)、自治体青年政策オブザイヤー(自治体への評価制度)、全国若者会、全国生徒会、全国青年協議会

講演の最後では、松戸市の大震災以降の対応についても触れられました。
高橋さんのように、行政、議員、民間研究者といった複線の立場の経験を持つ30代・40代が増えると、日本も面白いことになりそうですね。

2011/03/29

日本英語教育学会の第41回研究集会

本日は、日本英語教育学会の第41回研究集会(JELES: The English Language Education Society of Japan)を聴きに行きました。
日本における英語教育に携わる方の学会です。
一学習者として聴きにいったのですが、目からウロコの話がたくさんありました。

参考になったことを箇条書きにて。
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・小中高と大学は連携したいが、連携を妨げる壁がある。(大学の利益相反の問題にぶつかってしまう。)
・日本での英語教育は実績の情報が大量に集まりつつあり、薬で例えると、民間療法から漢方に近づきつつある。
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・青山学院大学の授業では、教室の時間だけでは英語学習の成果が出ないので、ICTを積極的に利用して、モバイル、家からも学習できるようにしている。ラーニングマネージメントシステム(Moodle, CCS)、コンピュータテスト(CASEC, Versant Speaking)、モバイルラーニング、遠隔ラーニング、デジタル・ストーリーテリングなどを十分に活用。
・英語教育を通して、「世界観の違い」「西洋文化と東洋文化」「異文化間コミュニケーション」の理解を目標としている。
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・CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)の日本版、CEFR:JSを作成中。
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・ガーデンパス文(Garden path sentence)・・・読解途中で再解析を必要とするような文「彼が犬を連れている男を追いかける。」
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the speech accent archive ・・・ 各国の英語訛りを集めたサイト
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研究集会は明日も有ります。
英語学習者にとっても勉強になる発表なので、もし関心がある方は参加してみてはいかがでしょうか。