2011/04/12

学び方という「名前のない品質」を、パターン言語を使って向上する

慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスでは、「学習パターン」という小冊子を作成し、学生が自律的に学び方を向上していけるような仕掛け作りに活用しています。
4月12日開催のQCon Tokyo 2011で、その発案者である井庭崇氏の講演を聞きました。

「学習パターン」は、公募で集まったキャンパス内の学生が中心となったプロジェクトで作成され、作成にあたっては、パターン言語と呼ばれる手法を利用してまとめられました。

パターン言語は、もともとは建築家クリストファー・アレグザンダーが提唱したもので、すぐれた建築に存在する「名前のない品質」を形式化することを目的としたものでした。現在は、コンピュータ開発などの他の分野でも幅広く利用されています。

井庭氏は、この冊子を活用することで、学び方のワークショップがとても盛り上がるようになったと言います。ワークショップの前に、自分が過去に経験のある学び方、これから未来に挑戦したい学び方を、冊子の中から5つづつ選んでもらい、ワークショップで、他の参加者と会話しながら、自分が挑戦したい学び方をすでにやっている人を探してもらうのだそうです。

学び方は経験的な事柄なので、業界の知識や、経験年数による知識の壁を超えて、参加者が自由に対話することが可能で、自分の経験を話すことを通して、その経験について考えを深めることができるのです。

また、冊子を作成したことで、数量的な計測(アンケート)が可能となり、その計測結果の分析を通して、さらに「学び方」についての深い考察が可能となりました。今後、学び方の傾向分析などに活用できるでしょう。

この「学習パターン」におけるパターン言語の活用は、学び方という「名前のない品質」を認識し、参加者間のコミュニケーションを誘発し、最終的には自分自らの学び方の向上に寄与していくという、具体化な適応例を提供しています。

現在、「学習パターン」の冊子は、学内向け、学外向けにまとめられて、学習パターン・プロジェクトのウェブページ(http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/)で公開されています。

2011/04/06

AWS クラウドアドバンテージ セミナー



4月6日午後に開催された「AWS クラウドアドバンテージ セミナー」を聴きに行きました。

データセンター「東京リージョン」が稼動した後、はじめての大規模なセミナーとなりました。
しかし、地震の影響もあり、派手な演出はなく、AWSの実績の紹介が中心となりました。

キーノートセッションの中で、エバンジェリストの玉川氏は、地震の後「自社システムの可用性を高めるのにAWSを利用できないか」といった相談が増えたことから、待機系でのクラウドコンピューティングの導入が進み、クラウドのメリットへの理解が浸透すれば、徐々に主系の置き換えに発展するのではないかという見通しを述べました。

キーノートセッションの後は、日本での先行事例の発表が複数あります。
Ustream amazon2011_knot での配信もされています。

2011/04/04

高橋亮平さんの講演『「世代間格差の克服」に向けた政治参加と行政改革』に参加しました

4月3日に虎ノ門で開催されたプロジェクトKの「架け橋」企画での基調講演で、高橋亮平さんが、『「世代間格差の克服」に向けた政治参加と行政改革』と題した講演をされました。

高橋さんは若いながらもするどい論客で、市川市長選挙の逸話は友人から聞いていたので、前から一度話を聞いてみたいと思っていました。

講演は、前半で世代間格差の現状とその原因について、後半では、EUの中でも特に若者政策に積極的なスウェーデンでの取り組みから、若者政策の方向性を紹介しました。

いくつかキーワードを以下に

  • 「人生前半の社会保障」 … 労働、家族、教育に関する社会保障と呼んでいて、日本では医療、年金制度に比べて予算配分の比重が低い。
  • 「シルバー・デモクラシー」 … 高齢の有権者が増えることによって、政党の政策が高齢者向けに変化していく現象。故内田満氏が『シルバー・デモクラシー』という書籍を1986年に出している。
  • ワカモノ・マニュフェスト2008では、4つの政策の柱を設けた。「労働・雇用」「財政・社会保障」「若者参画」「家族・教育・子育て」
  • 民主主義教育の例:若者の模擬選挙、争点教育(選挙での争点を勉強する)、マニュフェスト比較
  • 若者政策の例:自治体首長へのインターンシップ、官邸フェロー制度、審議会へのクォーター制、選挙権の年齢引き下げ、被選挙権の年齢引き下げ
  • スウェーデンでの例:青年事業庁(省庁横断、政策評価と今後の方針立案、非営利セクターとの連携)、自治体青年政策オブザイヤー(自治体への評価制度)、全国若者会、全国生徒会、全国青年協議会

講演の最後では、松戸市の大震災以降の対応についても触れられました。
高橋さんのように、行政、議員、民間研究者といった複線の立場の経験を持つ30代・40代が増えると、日本も面白いことになりそうですね。